赤い自由帳

浦和レッズを中心にJリーグを観ています。戦術は語れません。

ダイナミックなチーム?スタティックなチーム?

自分はサッカーファンというよりは浦和ファンという感じなので、普段は浦和の試合を中心に観戦しており、逆に浦和の関わらない試合を観ることはあまりない。なので、いわば自分のサッカーを観る目は浦和基準になっている。

ただ、ポンと時間が空いた時に、リアルタイムで開催されている試合を観ることがある。そういう試合は、浦和の試合に比べてどうか、という見え方になる。

8/21の湘南vs鹿島の試合を観て、こんな感想を持っていたらしい。(ちなみに良い悪いを言いたいのではなく、違いを感じたという意味)

この感想がどこから来てたのかを見てみたく、いくつかデータを取ってみた。

以下のグラフは、横軸に攻撃1回あたりのパス数*1、縦軸に1試合当たりの守備のファウル数*2をとったもの。(2022シーズン第33節までのデータ)

 

横軸は、浦和の攻撃は基本的にはDFラインから手数をかけてロジカルに前進することを目指しているので、それに慣れていると手数をかけずに前に行こうとするサッカーに違いを感じたのではないかという発想から。

縦軸は、アグレッシブにボールを獲りにいくような守り方をするチーム同士の戦いだったから、なかなか局面が落ち着かない試合に見えたのではないかという発想から。
ただし比較的手軽に手に入るデータの中に、「アグレッシブな守備」を示すものを見出せなかった。なので、アグレッシブさの副産物として守備のファウル数が嵩むのではないか、という仮定のもと、ファウル数を利用。(自分でもあまり納得していない。できれば改善したい。)

実際にプロットしてみると、左上の福岡から右下の方の神戸・浦和あたりに向けたトレンド線に、多くのチームが集まっている。関連が見えるということは、構造的な理由があるのだろう。

 

解釈としては以下の様な感じだろうか。

  • 左上の方のチームは、アグレッシブにボールを獲る守備から手数をかけない攻撃を志向している。
  • 右下の方のチームは、手数をかけて盤面を整えながら攻撃する。守備も、人に行くよりも盤面(スペース)の管理を意識している。あるいは守備に切り替わったときにも盤面が整っているから、守備で無理する必要がない。

まぁ好意的な解釈であって、ファウルが多いのは単にプレーが荒いとか、逆に少ないのはボールを回すのに陣形を崩しているから、後追いになってファウルも出来ない、とかかも知れない。個々のチーム解釈は、チームの試合をある程度観ていないと、というところか。

 

さて、浦和は予想通りというか、右下の方に来ている。

一方でこの件の出発点だった湘南と鹿島は共に左上の方のチームであり、浦和の試合展開を見慣れていると、やはり違いを感じたのだろうと思われる。

 

全体を見て、興味深い点が2つあったのでメモ。

 

①ファウルの少ないチームに感じるスペインの風

グラフの下方に位置する、ファウルの少ないチーム。よくよく見ると、セレッソ・浦和・神戸・清水・東京など、ここ数年でスペイン人監督(リカルド・ロドリゲス、ロティーナ、アルベル)が指揮を執ったチームが多い。戦術やチームの作り方と関連があるのだろうか。

 

②トレンド線から外れているチーム

トレンド線から外れているチームについて、外れている要因を想像するとそれぞれ特徴が浮かんできて面白かった。(あくまで浦和との試合+αを観た程度のイメージからのものだが)

まずグラフのかなり右にいる川崎については、圧倒的にボールを持てるということだろう。

マリノス鳥栖は、ボールを持つこととアグレッシブな守備を両立できているということだろう。ロジカルな攻撃を持ちつつ、我武者羅さみたいなものも忘れていないというか。特にマリノスについては、先日の試合で嫌というほど味わった。

また札幌については、ボールを大事にするミシャサッカーの攻撃面と、マンツーマン守備で球際が多く発生することによるファウル数の増加の組み合わせで、今の位置にプロットされているのだろう。

 

乱暴というか簡便な集計ではあったが、それなりに楽しめた。もっといいデータの入手方法を見つけたら、また考えてみたいと思う。

 

【追記】

「Sprint without ball(ボール非保持局面のスプリント数)*3」という指標があったので、そちらとパス数を対比させてみた。

 

ファウル数と比べると、チームごとのプロット位置は少しずつ変わりながらも、大枠の傾向は変わらなそう。

目についたことを記載すると、まず鳥栖の位置がかなり特徴的。同じくらいボールを持つチームに比べて、かなり守備時のスプリントを頑張っている。観戦した印象として、鳥栖は確固たるボール保持・前進のメソッドを持ちつつ、守備でも手を抜かず走る好印象のチームだったが、やはりデータも裏打ちしていた。

 

浦和はグラフ上では、東京・札幌・神戸と、中位群のチームと近い位置にいる。

そして浦和の右の方、すなわちスプリント数を保ったままよりボールを持つ方向に横浜と川崎がいて、左上、すなわち多少ボールを手放してもスプリントを頑張る方向に広島がいる。これは示唆的だなと感じた。

浦和がより高いレベルに行くには、今のスプリント強度を維持したままよりボールを持てるようになるか、多少ボールを手放してもより強度を上げていくか、どちらに向かうにせよ、よりハッキリとした方向性を定めて突き詰めていく必要があるのではないだろうか。今のチームの戦術の方向性としては、横浜・川崎の方向だと思うが。(と思ってたら監督交代があるということで、まったくわからないが)

 

あと、磐田・清水・ガンバという降格圏に沈んでいるチームがグラフの下の方に来るのは偶然なのだろうか。もしかしたら、J1で戦い抜く守備の強度に達していなかった、ということかもしれない。