赤い自由帳

浦和レッズを中心にJリーグを観ています。戦術は語れません。

【浦和レッズ】「コンセプト」に感じるちょっとした違和感と私見

2019年末に発足したフットボール本部が策定した「コンセプト」。一貫したコンセプトの不在を課題と捉え、策定されたもの。

www.urawa-reds.co.jp

自分は、コンセプトと3年程度の中期的目標を定め、それに沿ってチームを強化していくというプロセスを踏むということについては、基本的に賛成だ。

ただ、大いに後出しになるが、打ち出されているコンセプトにちょっと違和感を感じる。具体的には以下の2点。

  • 試合に勝つ・優勝するというところを出発点としているかいまいち見えてこない、という点。(浦和らしさの追求に焦点があたりすぎてないか)
  • キーコンセプトにせよ、チームコンセプトにせよ、「浦和のサッカーはどうあるべきか」というものに、やや具体的に踏み込みすぎているのではないかという点。

プロサッカークラブであり、また3年計画としてリーグ優勝を打ち出していた以上、必然的にコンセプトは「勝つために」定めるものになるはずだ。このコンセプトが表現できたときに、我々はチャンピオンになれると思っている。だから、このコンセプトを追い求めてチームを強化していく、という論法になるはず。

しかし、この会見での打ち出され方を改めて見ると、「勝つために」という部分があまり見えず、どちらかというと「浦和のサッカーとはこうあるべし」という部分にフォーカスが当たっているように感じた。

まずキーコンセプトとして『浦和の責任(浦和を背負う責任)』が示されている。会見で言及されている内容は以下であり、選手理念の中でも一番上に記されている。

土田SD 「これからチームコンセプトをつくっていく上で最も大切なのが、『浦和の責任』というキーコンセプトです。浦和の街を理解し、伝えていかなければならない、サッカー文化が根付き、歴史があり、熱いファン・サポーターのみなさんが住んでいる街、そこをホームタウンとする浦和レッズには責任があります。選手はあの埼玉スタジアムで、あの環境の中でプレーをする責任を感じてプレーしなければならない、この浦和の責任を再認識し、ピッチで表現していかなければならないと考えています。」

「浦和の責任」は、『サッカー百年の歴史を持つ街・浦和の伝統と誇りを~』みたいな文脈で語られている。地域密着という意味では大事なことだが、ちょっと原理主義的というかカルト的なイメージを持ってしまう。コンセプトそのものは、よく読めば書いてある内容は普遍的な内容(尊敬とか献身性とか)なのだが。

またチームコンセプトとしていくつか列挙されているが、具体的な内容として、「最終ラインを高く」や、「攻撃はとにかくスピード」などと言及されている。

これが、『浦和レッズのサッカーは何なの?』に対する土田SDの答えなのだろうが、根底にあるのは、2003年のナビスコ優勝あたりからはじまり、2006年のリーグ優勝・2007年のACL優勝を頂点とする浦和の全盛期(とされている時期)のサッカーだろう。 それを現代的に表現するとしたらこうだ、ということを示しているのだと想像する。戦術素人の自分のイメージする言葉に置き換えると、ゲーゲンプレスとかストーミング、レッドブル系のサッカー、みたいなものだろうか。(一緒くたにすると、詳しい人には怒られるのだろうが)

浦和のサッカーはこうあるべきと提示されたとき、個人的には一つの考えとして理解はできるのだけれど、果たして万人に受け入れられるのか?という単純な疑問がある。例えば、ミシャ監督期に浦和を見はじめた人たちは、ちょっと違和感を感じるのではないか。 別に土田SDの掲げたものがダメというのではなくて、カウンターだろうとポゼッションだろうと、どんなサッカーを打ち出したところで、「浦和のサッカーかくあるべし」というものに、万人のコンセンサスは得られないだろう。今の言葉で言うと、「それって、あなたの感想ですよね」と言われてしまうようなものではないか。

と、文句ばかり言っていても…なので、自分的に腹落ちする内容を。

かつて、「浦和のサッカーは勝つサッカー」と発言して大顰蹙を買ったGMがいた。 発言のタイミングと、そこから先への落とし込みが見えなかったから批判されたと思うのだが、「浦和のサッカーは勝つサッカー」という言葉そのものについては、自分はわりと同意する部分がある。

自分の思う浦和らしさを言葉にしてみると、こんな感じだろうか。

  • 参加する全ての大会で優勝を目指す
  • そのために、目の前の一戦に勝つべく、常に全力を尽くす
  • そのために、「どんなに苦しい状況でも、最後まで走り、闘う」

これを「キーコンセプト:浦和の責任」と言ってくれるのならば、割とすっきりと受け入れられる感じだ。

別に浦和以外でも成り立つし、こんなことプロチームとして当たり前の大前提だろ、という内容だけど、正直大上段ってこれくらいでいいと思っている。というか、これくらいの粒度感でないと「不変のコンセプト」にならないのではないかと思う。

そして、「参加する全ての大会で優勝を目指す」近道として、いろんな要因(リーグや世界の戦術トレンド、クラブの財力、ユースを含む現有戦力、埼玉の気象条件etc)を考慮して、中期的な戦術や強化方針(=チームコンセプト)を定め、それを実現することを目指しますという感じだろうか。

ここは解釈の問題なので、ポゼッションだろうとカウンターだろうと、その時のGM/SDが定めてもらえばいい。一定期間、それこそ3年くらいは貫いた方がいいと思うが、状況次第で見直していけばいいものだと思う。

そして、進捗が悪かったり、コンセプトは実現できたところで勝てないことが続いたら、責任をとって交代してもらう、という感じだろうか。

とにかく、浦和の大上段には「勝利」があってほしい。常に勝利を大上段に置くのが、自分の中での浦和らしさ。 その勝利への近道としてチームコンセプトを定めて強化するという方針はいいのだが、じゃあ目の前の一戦でコンセプトに殉じて負けてもいいか?と言われると、自分としては否。目の前の勝利を優先してほしい、という思いだ。ポゼッションスタイルを志向していても、負けてて残り1分だったらさっさと放り込もうぜ、という感じ。

まぁ、これも「あなたの感想ですよね?」なんだろうけども。