赤い自由帳

浦和レッズを中心にJリーグを観ています。戦術は語れません。

【浦和レッズ】大槻監督の退任に思うこと

大槻毅監督の、2020シーズン限りでの退任が発表された。

 

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コロナ禍の難しいシーズンだったとは言え、クラブの掲げていた「得失点差プラス2桁とACL圏内」の可能性が絶たれ、またそれはそれとしても、単純に今シーズンの数字を見れば満足とは言えないわけで、この判断は妥当だとも思う。

 

退任後の会見で、大槻監督は以下のように語っていた。

 

(目の前の試合を100パーセントで戦うことはあると思うが、大槻監督が3年計画の1年目で何を構築したのかと自負しているのか?)

「監督が変わったりすることもありますが、チームを作ることは家にたとえると増改築のようなものだと思っています。選手は何人かずつ変わっていきますが、25人がらっと変わるわけでもないですし、クラブの歴史がありますし、人の流れもあると思っています。
それが続いている中で、ACLがあった際にはACLに合わせたような編成をしなければならなかったり、ここ数年、僕も含めてですが、ミシャさんの後に監督が変わることが多かった。そのたびにクラブがオーダーを聞いて選手を補強したりすることがあった中で、編成も含めて少しバランスが悪いところが出てきたと思っています。

都度、やるサッカーが変わっていますから、そのたびにとってくる選手の質が変わってくるようなことがありましたので、3年計画の最初のところでベースに戻すというか、針をしっかりとゼロに近づける作業は必要だったと思っています。その中でサッカーのベースとなる強度や走ることだけではなく、しっかり判断するということをベースの部分で共有するという作業が、今年は特に初期で必要だったと思います。そういったところで一度、選手の目線を揃えてサッカーをするというところ、特に一定のスタイルで長くやってきた選手はそれに近いものを表現する形が多かったところを少しそろえるようなことは必要だったと思います。…」

(契約満了の発表の前後で大槻監督の心境に変化はあったのか?)

「僕自身もそういうものはあるのかなと思いましたが、思いのほかないですね。というのは、しっかりとやってきたつもりがありますし、この仕事に対して誇りを持って、責任を持ってやってきたつもりがあるからです。結果として数字のところは僕自身もふがいないと思っていますが、この仕事に100パーセントかけてきたことに関しては揺るぎのない自信があります。…」

 

全て妄想であるが。

 

2020年の新強化体制の発足を受けて、「ミシャサッカーの異界送りをして欲しい」と書いたが、大槻監督は現場レベルでそのミッションにあたっていたようにも見える。
その上で新たな基礎を造り家屋を建て、ACL圏内に入れれば契約延長してもいいよ という感じだったのだろうか。

 

おそらく昨年末、ギリギリの残留をし、急遽新しい強化体制立ち上がったようなチームの監督を引き受けてくれる人など、いなかったのだろう。
そこで大槻監督に1年間の暫定監督のようなオファーをし、大槻監督も引き受けた。

そうであるならば、クラブに対する武士のような忠義心というか、あだ名通りの任侠心みたいなものに恐れ入る。

確かに在籍年数も長く、その時点の監督でもあったわけだで、他者とは異なる責任感もあったのだろうが、それにしてもこんな捨て石のような仕事はなかなか引き受けられるものでもないと思う。

 

ただ、これもまたサポーターに対する"組長スタイル"(自己プロデュース)の1つで、先程のようなメッセージを出すことで、受け取る側にこんな妄想を抱かせるところまで計算しているような気もするが…、仮にそうだとしても、それができると言うのも能力の1つだろう。

 

大槻監督の言葉で1番好きなのは、やはりこれ。

 

「勝っていても負けていても同点でも、どんなに苦しい状態でも戦いなさい、走りなさい。そうすれば、この埼玉スタジアムは絶対に我々の味方になってくれる。そういう姿勢を見せずして、応援してもらおうと思うのは間違っている。ファン・サポーターのみなさんは、選手たちが戦うところを見に来ているし、浦和レッズのために何かをやってくれるところを見に来ている。埼スタが熱く応援してくれているのは、我々が戦っている証だ。それだけは絶対に忘れてはいけない」(MDP539号 監督メッセージ)

 

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個人的に、「浦和を背負う責任」の説明文ですと言われて1番しっくりくるのがこの文。
クラブが現在掲げる『浦和のために最後まで走り、戦い、貫く』という指針も、この言葉から来ているはず。

 

サッカーというより浦和レッズが好きな自分としては、浦和が戦術的にどういうサッカーをするかという点は、正直そこまで重要ではない。
こういうのが観ていて楽しいなというものはあるが、ギドのサッカーも、ミシャのサッカーも、大槻監督のサッカーも、変わらず応援してきた。

 

もちろん、3年なら3年の計画の中で、この方向で行くという指針を出して強化をするというサイクルの積み重ねは必要だと思っている。
ただ、絶対カウンターだ、ポゼッションだみたいな、「浦和の戦術かくあるべし」というものは、あまり求めていない。

 

そういったことよりも、大槻監督の言葉のようなことを体現している選手に、浦和っぽさみたいなのを感じ、応援したくなる。

 

 

 

大槻監督の言葉は普遍的なもので、"浦和レッズ"と"埼スタ"を他のチームのものに置き換えても十分成り立つし、「精神論か」「そんなこと言わなくたって当たり前…」というものかもしれない。

でも、これを自分の言葉で語り、そして選手には伝えているよというメッセージをサポーターに発信できるという点において、浦和を誰よりも理解している監督だったと思う。

 

これから大槻さんがどんなキャリアを志向するのかわからないが、今シーズンの残り試合は、少なくとも周囲から「この監督はダメか」と思われないような戦いを、チームにはしてほしい。
そして、ご本人が納得するようなオファーが届いてほしい。鹿島にボコられている場合じゃないんだよ。

 

大槻さんは少なくとも昨年末に契約更新したタイミングで、プロの監督として生きていくと決めて(もっと前に普通にしているかもしれないけれど)、それなりの契約を結んでいると思う。
だから、クラブ内の別のポストに横滑りみたいなことはないだろう。

 

ただまたいつか、大槻監督もキャリアを積んで、浦和もクラブとしての力を取り戻した時に、もう一度巡り合う事があればいいなと思っている。

 

その時は、思う存分、思いのままに采配を奮ってもらいたい。